「豊橋妖怪ハンコ展」の最終日、最後のお客様のお話。
この日は展覧会楽日とあって、京都や奈良からもお客様が来てくださった日だったのですが…。
午後4時を幾分か過ぎた頃、1台のタクシーがばったり堂の前でキュキュッと止まりました。降りてきたのは、若い女性二人組。
「今日が最終日と聞いて、時間もギリギリで、もう閉まっちゃうんじゃないかと思って、タクシーで来ました」
「どこからいらしてくださったんですか?」
「静岡です」
「まぁ!どうぞ、どうぞ。ゆっくり見ていってください」
お二人とも妖怪がお好きだそうで、販売している豊橋妖怪グッズを一品々々じっくりと吟味していらっしゃいました。
「これ、ください」
そこには、購入される「妖怪ご祝儀袋」や「豊橋妖怪便せん・はがきセット」などにまざって、販売用のミニハンコの大西の馬頭観音様がありました。
大西の馬頭観音様はとても人気で、それまで店頭に出してはすぐ売れてしまうという傾向にあったので、「どうしてもほしい」という方にすぐにお渡しできるよう、最終日まで事務局で保管していたものでした。
(販売棚に希望の豊橋妖怪ハンコがなくても、「○○の妖怪のハンコがどうしてもほしい」というお客様がお見えになると、その時々のオーダーに応じて1点物の手彫りでお応えしていました)
その女性は思いやり深いお人柄が、お話やしぐさに現れていて…。思わず、口から言葉が出てしまいました。
「この馬頭観音様は貴女の元にもらわれていって、とても幸せですね。この馬頭観音様ご自身も、とても喜んでいらっしゃると思います」
「ありがとうございます」
慎ましやかに、少し照れたように、笑ったお顔が印象的でした。
期間中、たくさんのお客さまが豊橋妖怪ハンコを押したり、購入したりしてくださいました。そうした数々の妖怪ハンコたちは、いまもどこかでひっそりと存在しているのだと思います。
「みんな、いまどうしているのだろう?」
みなさんも、その後の近況を、ぜひ、ばったり堂までお知らせください。
【お知らせ】
出版社の春夏秋冬叢書から発行されている
三遠南信を応援する季刊誌「そう」の12月10日発売号に「豊橋妖怪ハンコ展」が掲載されています。
▼春夏秋冬叢書 季刊誌「そう」
〝冬を訪ねて、三遠南信を知る 温冬知新”
http://www.h-n-a-f.com/sou-hakkou-folda/sou37.html
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