わし、真田幸村。再々の登場だのん。今日はみんなに報告したいことがある。
「豊橋妖怪ハンコ展」に来た人間のお客から、感謝の言葉をもらったんじゃ。わし、泣きそうになってしまってな。
妖怪庭には、苔や椿や草木盆栽といっしょに、わしら妖怪の提灯が展示されておるのよ。縁側で、抹茶&妖怪和菓子と一緒に庭を楽しんでもらう趣向でのん。
「あら、あれは真田幸村公の大根流しの提灯かしら?」
ある婦人がそう聞いてきたので、わしが「そうじゃ」と答えたら、
「私の娘が小さい頃、大層お世話になったの。毎年12月12日に行われる真田神社の大根流しには、4回くらい行ったかしら。娘がぜんそく持ちだったから。こんなところでまた出会えるなんて」
わし、はっとして婦人を見返すと
「立派なお祭りなのに川はすごく小さくて狭いのよね。大根や絵馬も数本流すと川下でこっそり回収したりなんかして」
くすりと笑みながら、庭に目を戻しておった。
茶席を立つ勘定のときになって、婦人、札をだして、こう言ったんじゃ。
「おつりは結構です。わたし、上手く言えないんですけど、妖怪のみなさん、ご準備になにかとご入用でしょうから。なんなりと使ってください、少額ですけど。」
わし、オロオロしてしまってのん。涙が浮かんでしまって恥ずかしくて、あわてて、
「承知した。寄付ということで、有難く使わさせてもらうぞん」
って、婦人の顔もまともに見られずに一言だけ。
妖怪妖怪ハンコ展には、いろんな人間が来る。わしらからしたら、人間どもの方が面白いぞん。みなと会えることを妖怪一同、心から楽しみに待っとるでのん。
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